#はたらく

宮津の魚をどこよりも新鮮に
どこまでもおいしく

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宮津の特産物と言えば米、酒、野菜など多数ありますが、忘れてはならないのが新鮮な魚介類です。豊かな海で育った魚たちは身が大きく上質で、首都圏の料亭からも注文が絶えません。
そんな水産業を支えているのが、宮津エリアに位置する株式会社山一水産(以下、山一水産)です。今回は、統括本部 本部長の升間究さんにお仕事の上で心がけていることや業務でのやりがいについてお話を伺いました。

人と魚が往来する活気ある職場

――山一水産の事業内容を教えてください。

メインは卸売業で、京都の宮津や間人、兵庫の市場で魚介類を買い付け、地元の料理店さんや旅館、全国の飲食店、豊洲市場を中心に全国の中央市場に出荷しています。また、その新鮮な魚を生かして宮津エリアにある飲食店「海味鮮やま鮮」を運営したり、加工工場で煮付けやフライにして市内の量販店の鮮魚コーナーに卸したりもしています。
最近では、一般の消費者向けにオリジナルブランド「uroco」を立ち上げ通販事業も始めました。

――さまざまな流通経路で消費者との接点を作っているんですね。その中で升間さんはどんな業務を担当しているんですか?

僕は、市場で魚を買い付け、お客様とやりとりしながら出荷先を決める「振り分け」の仕事を担当しています。
一日の流れで言うと、毎朝9時ごろからセリが始まるので、それに間に合うよう出社し、午前中はずっと魚の買い付けです。昼過ぎにセリがひと段落したら、今度は、買い付けた魚を店舗ごとに振り分け、準備できたものからトラックに載せて発送します。取引先の数も多いですし、出荷する魚の種類もさまざまなので、午後はそれにかかりっきりで、仕事が終わるのはだいたい18時頃です。

目利きのセンスを磨く陰の努力

――そもそも升間さんが山一水産に入社されたきっかけは?

友人の紹介です。僕は中学生の時に宮津に引っ越して以来ずっとここに住んでいますが、周囲に漁師さんや水産業に就いている人がいなかったので、特別この仕事を意識したことはありませんでした。でもアルバイトとして手伝い始めたら徐々に面白くなってきて。正式に社員として入社し、気づけば今年で7〜8年目になります。

――何か惹かれるのもがあったんですか?

そうですね、最初は魚の名前もほとんど知らず、本当に無知でした。でも、毎日魚の写真を撮って、ノートにメモしていくうちに少しずつ楽しくなってきて。同じ魚でもサイズや地方によって呼び方が違うんですよ。イシダイなら、タカバとかチーパーとか。予備知識がない分、見るもの聞くもの全部が新鮮で「魚って面白いなー!」と日に日に興味が増していきました。


――そういう知識は誰から教わるんですか?

仕事を通して先輩方から教えてもらうこともありますし、自分で調べることもあります。
あと、最初の頃は、地元の飲食店の料理人さんたちに聞くことが多かったですね。自分では「小ぶりだから、喜んでいただけるかな」と不安に思っていても「あの魚、脂がのってめちゃくちゃおいしかったよ!」とご好評いただくこともあって。
僕らは見た目でしか魚を判断できませんが、料理人さんたちは身のつき方、脂の乗り、実際に調理した味わいまでご存知なので、毎回フィードバックをいただき、どういう方にどんな魚をご提供すべきか、今でも勉強しています。

「魚が商売道具になってはいけない」

――地道な努力を積み重ねて一人前に成長するわけですね。今、仲買人という仕事をする中で心がけていることは?

これは、会社全体として言えることですが、「魚が商売道具になってはいけない」ということです。水産業は自然を相手にする分、安定供給を完璧に叶えるのはなかなか難しいことです。だからこそ弊社では、ブライン冷凍機(包装した食品を−35度の液体アルコールに漬けて急速冷凍させ、刺身に使えるレベルで新鮮なまま保存する装置)を導入し、できる限り需要と供給のバランスを保っているわけですが、それでも思い通りにいかないこともあり、時には売れ残りが出そうになることもあります。
でも、そこで簡単に廃棄したり、逆に売上を求めて高級魚だけを扱ったりするのは、心が通っていない気がして……。それは、魚を商売道具としか見ていないのと同じだと思うんです。命ある生き物を扱う以上、どんな魚もおいしい状態でお客様に届けられるよう努力しています。

――具体的にどういう対策をとっているんですか?

調理に手間がかかったり、個性があって扱いが難しかったりする魚は、関東に出荷するより、地元の人たちの方が食べ方をよくご存知なので、加工工場で調理して宮津市内の量販店の鮮魚コーナーに出すようにしています。

――複数の流通経路を持っているからこそできることですね。

はい、そうですね。あとは、お客さんに魚の状態を嘘偽りなく伝えること。さっきも話したように、相手は自然ですから、必ずしもお客さんの要望に100%応えられるわけではありません。いくら「たっぷり脂がのった魚がほしい」と言われても、旬でなければ手に入らないこともあります。
でも、そういう時は「今の時期はそこまで脂がのっていないけど、こういう方法で調理すればいいです」と代替え案を出し、本当のことを伝えるようにしています。やっぱり、仕事って信頼関係で成り立っているので、30点のものを100点と言って売るようなことはしたくありませんから。

“産地のエピソード”という彩りを添えて

――誠実な仕事ぶりが伺えます。7〜8年目と言うと、ある程度経験を積みますます仕事が面白くなってくる頃だと思うのですが、やりがいを感じるのはどんな時ですか?

そうですね、最近は京都以外にも、全国の高級料亭さんからも問い合わせを受けることが多く、弊社では、遠方の人たちにも手軽に情報発信できるようSNSでグループを作り、毎日水揚げされる魚の状態をお伝えしています。全部で200店舗ほどが登録してくださっているんですが、私が紹介した魚に発注が入るとやはり嬉しいです。

――具体的に何を伝えるんですか?

例えば、春に水揚げされる桜鯛なら、漁師さんが身のつきの良いものを選別し、生きたままいけすに入れ活魚として持ってきてくれるので、その様子をお客様に発信しますし、由良川のシラウオなら、漁師さんが一人しかおらずなかなか水揚げされないので、その希少性を伝えます。
お寿司屋さんや料亭さんの場合、食事にいらっしゃったお客さんに料理の説明をする機会が多いので、産地のエピソードを求めておられるんです。

――エピソードによって、さらに魚の付加価値を高めるということですね。

宮津には3つの海があり、ミネラル豊富な宮津湾では通常の約2倍もの大きさの天然大トリ貝が獲れますし、プランクトンが多い阿蘇海はイワシをまるまる太らせ金樽鰯という高級魚に育ててくれます。また栗田湾では立派なイワガキが養殖され、これだけでも十分すごいことなのに、さらに寒ブリや寒サワラのような回遊魚がちょうど脂ののった時期にやってきて、宮津は本当に漁場に恵まれた場所です。漁師さんたちの魚の〆め方も上手く「鮮度をキープしてくれる」と料理店さんからもとても好評です。
仲買人である僕らが、こうした産地の豊かな環境、漁師さんたちの努力や思いといったバックグラウンドを発信することで、宮津産の魚の魅力を伝えていきたいと思っています。それが、宮津のことを知ってもらうきっかけにもなりますから。

――今後、ますます魚介類を通して宮津のことを知ってもらう機会が増えるといいですね。

最近は海外への輸出の話もあり、新しいことに挑戦できる機会が増えています。まだまだ若造の僕が言うべきことではありませんが、今後さらに山一水産の事業が成長し「宮津の魚屋にも夢がある」という姿を周囲に見せていきたいです。いつか仲買人という職業が、地元の子どもたちの憧れの職業になったら最高ですね。

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